スポーツ鍼灸マッサージ治療院が教える!〜シンスプリントについて〜
オーバーユースにより生じるスポーツ障害であり、筋膜の牽引や脛骨への力学的負荷が原因とする説がある。筋膜の牽引:筋(長趾屈筋、ヒラメ筋、後脛骨筋)の活動により脛骨骨膜に沿った筋膜の付着部に歪みを生じる。
脛骨への力学的負荷:運動での力学的ストレスによって骨外傷が起こり、脛骨が過剰なリモデリング反応を生じる。
ランナーに発生が多く、男性より女性で発生率が高い。
股関節の内旋可動域が大きいことや、足部内側縦アーチの低下(舟状骨の降下)、接地直後のスキルの違いなどの身体要因に加え、トレーニング要因(強度や時間、頻度)や環境要因(靴、路面)が組み合わさることで生じる多因子疾患とされる。
病態
脛骨内側の遠位三分の一から二分の一に範囲に広がる筋や骨膜、骨髄の炎症に伴う疼痛が見られる。
症状
脛骨内側に沿ってびまん性の痛みと腫脹が存在する。
運動時の痛みは、症状が軽度の場合は運動直後や運動開始直後に出現するが、重度の場合は運動中の痛みでパフォーマンスに支障をきたす。
診断
MRI、骨シンチグラフィーや局在する圧痛の存在により疲労骨折と鑑別される。
MRIでは筋や骨膜に沿って高信号領域が見られ、重度の場合は骨髄内に高信号がみられる。
骨疾患や虚血性疾患を除外した上で、脛骨内側縁に沿って生じる運動中や運動後の痛みがあり、同部位に圧痛が存在する症状をもってシンスプリントと診断される。
治療
保存療法が第一選択である。
運動中の疼痛により競技に支障が出るほど症状が重度の場合は荷重運動を休止し、競技自体に支障が無いような症状が軽度の場合はトレーニング量の調整により負荷を軽減し、スポーツ活動を継続しながら治療を行うこともある。
リハビリテーション
疼痛の出現場面や程度、痛みが消失するまでの時間について把握する。
圧痛:脛骨内側の骨膜、後内側縁の筋膜、内側縁後方の筋を触知し、痛みの生じる部位(組織)を評価する。
運動時痛:抵抗下の運動では足趾屈曲時の長趾屈筋の収縮で痛みを訴えることがある。
荷重時痛:スクワット(両脚→片脚)、カーフレイズ(両脚→片脚)、ホップ(健側→患側)などを行い、疼痛の出るレベルを評価する。
関節可動域
距骨下関節回内、足関節背屈、下腿内旋について他動的な可動域を評価する。
筋力
ランニング動作の接地時に活動する筋を中心に、足関節背屈・底屈、膝関節屈曲、股関節伸展・外転・外旋・内転筋力の評価を行う。
メディカルリハビリテーション
炎症管理
運動後のアイシングにより新たな腫脹の抑制、モビライゼーションにより残存した腫脹の除去を図る。
脛骨上に腫脹が見られる場合はアイスマッサージを行い、腫脹を筋や関節などの可動部位へ向けてモビライゼーションする。
底屈筋群の柔軟性改善
長趾屈筋、後脛骨筋、ヒラメ筋などの柔軟性を改善し、筋膜にかかるストレスを軽減する。
筋機能の向上
ランニングの接地場面に活動する筋を中心にトレーニングを行う。
股関節:大殿筋や中殿筋の筋収縮を改善し、ハムストリングスや内転筋との筋活動の協調性を高める。
足関節・足部:足部アライメントや筋機能に応じてトレーニングを選択する。
距骨下関節の過回内を伴う内側縦アーチの低下の例では、後脛骨筋や足趾底屈筋群の筋機能低下が生じている可能性があるためトレーニングが必要
距骨下関節の回内制限を伴う外側縦アーチ低下の例では、短趾伸筋や長・短腓骨筋の筋機能低下が生じやすいためトレーニングが必要
アスレチックリハビリテーション
動作分析
最初は片脚スクワットのような簡単な荷重動作でリスクとなる代償や癖を確認し、動作改善に伴いフォワードランジや前方ポップ、腕振りを加えるなど、課題の難易度を徐々に上げて評価を行う。
・下腿の内方傾斜や外旋、足部外転が生じる場合は、中・後足部の回内制限や下腿の内旋制限を解消し、本来の関節運動の連動による拇指球荷重を獲得する。
・足部内側縦アーチの低下は、足部外転や脛骨の内方傾斜が生じて筋の伸長による負荷を招くため、インソールやテーピングによるアーチサポートが必要。
・足趾屈曲を過剰に使いすぎた動作は、接地後の足関節背屈運動や足部回内運動を阻害する要因となるため、中足骨頭部での荷重を意識する。
荷重トレーニング
ランニングの接地直後の床反力パターンの変化が発症につながることから、接地時の姿勢や力発揮に着目したトレーニングを行う。
・タオル踏みスクワット:立方骨を挙上し、足部回内運動を誘導
・ステップアップ:昇段時にハムの収縮と股関節伸展を意識
・片足立ち+荷重移動:重心移動を中大殿筋の収縮によって制御する
2019年12月17日 21:48