人類の持久力の限界と遺伝子の役割
私たちの遺伝子は、私たちがどれだけ速く走れるか、どれだけ長く走り続けられるかに大きな影響を与えます。
しかし、最新の研究によると、持久力に関連する遺伝子の完璧な組み合わせを持つ人は、おそらく世界に一人もいないかもしれません。
この興味深い発見は、「Similarity of polygenic profiles limits the potential for elite human physical performance」というタイトルの論文で詳述されています。
遺伝子と持久力の関係
研究者たちは、持久力に関連する23の遺伝子多型を特定しました。
これらは、持久力のある個体とそうでない個体の間の遺伝的差異を示しています。
しかし、これらの遺伝子多型の「最適」な組み合わせを持つ個体は、非常に稀です。
例えば、全ての最適遺伝子型を持つ個体が存在する確率は、世界人口に対して0.0005%未満と推定されています。
遺伝子多型スコア(TGS)とは?
研究者たちは、遺伝子多型スコア(TGS)という新しいアルゴリズムを開発しました。
これは、0から100のスケールで個人の持久力に関する遺伝的ポテンシャルを評価するものです。
しかし、ほとんどの人のスコアは中央値に集中しており、完璧なスコア(100)を持つ人は非常にまれであることがわかりました。
人類の持久力の未来
この研究は、私たちの種の持久力にはまだ大きな未開拓の可能性があることを示唆しています。
しかし、その遺伝的ポテンシャルが一人の個体に実現されることはほとんどないでしょう。
これは、持久力が多くの遺伝子によって決定される複雑な特性であるためです。
地域的な遺伝子型の違い
世界の特定の地域からのアスリートが多くの世界記録を保持していることはよく知られています。
遺伝子型の地域間や民族間の違いは、これらの記録に影響を与えている可能性があります。
しかし、これが遺伝的な要因によるものなのか、それとも社会経済的な要因によるものなのかは、まだ明らかになっていません。
健康への影響
低い有酸素運動能力に関連する疾患や死亡率が高い遺伝子型を持つ個体もまた極めてまれであることから、私たちの種としては、一定の健康水準を維持するための遺伝的保護があると考えられます。
結論
この研究は、持久力という複雑な特性が、多くの遺伝子によって決定されることを示しています。
そして、私たちの中には、持久力に関して「完璧」な遺伝子プロファイルを持つ人はいないかもしれません。
しかし、これは同時に、私たち全員が持っている遺伝的な多様性が、私たちの種の生存と進化にとって重要であることを示しています。
将来的には、新しい遺伝子の発見や、遺伝子と環境の相互作用に関するさらなる理解によって、人類の持久力の限界が再定義されるかもしれません。