固有感覚の探求:Sherringtonの理論と現代科学
固有感覚、またはproprioceptionとは、私たちの体が空間内でどのように位置しているか、そしてそれぞれの部位がどのように動いているかを感じ取る能力です。
この感覚は、筋肉や深部組織の感覚器によって可能となり、運動覚(kinesthesis)とは異なり、関節や皮膚感覚器により影響を受けます。
Sherringtonは、固有感覚器が体内の微細な変化に反応すると考えました。
これらの感覚器は、私たちが自分の体をどのように動かすかについての情報を脳に提供し、運動の調整と調和を支えます。
例えば、固有感覚が欠如している状態では、物に手を伸ばす際の方向や振幅に誤差が生じ、関節間の協調動作に障害が起こります。
この感覚は、筋骨格系の内部モデルの発展と再計測にも不可欠です。
筋紡錘が筋長を信号し、位置覚や運動覚に深く関わることも明らかになっています。
つまり、一つの感覚は多様な感覚情報の集合によって成り立っているのです。
Sherringtonはまた、固有反射の概念を提唱しました。
これは、固有感覚器からの入力が単一シナプスを介して運動ニューロンを刺激し、骨格筋の微細な収縮を引き起こす現象です。
起立時の姿勢保持などがこの典型例で、体が前に傾くと背側の筋が伸張され、筋紡錘や腱器官の活動により運動ニューロンが活性化し、体を支え直すための筋収縮が起こります。
近年の研究では、筋感覚器よりも関節感覚器が位置覚や運動覚に重要であるとの見解が見直され、固有感覚の理解が深まりつつあります。
これらの知見は、リハビリテーションや運動学習の領域において重要な意味を持ち、私たちの運動能力や日常生活の質を向上させるための研究に貢献しています。