皮膚感覚の多様性:触覚から痛覚まで、神経線維の複雑な世界
私たちの皮膚は、外部世界との最初の接点であり、複数の感覚を伝達するための微細な神経線維のネットワークを持っています。
最近の研究により、この神経系がいかに複雑で多様な機能を持っているかが明らかになりました。
Vallboによる研究では、ヒトの有毛皮膚から無髄C感覚神経を通じて伝えられる触覚系が存在することが確認されました。
これらの神経は、運動制御や知覚の識別機能よりも、辺縁系機能(情感や感情)に関与することが推察されています。
これはサルでは少ないが、特に霊長類(プリマテ)に一般的な現象です。
Nordinの研究では、ヒト上眼窩神経からの無髄(C)神経のインパルスをタングステン微小電極で記録し、その応答には高・低の2種類の閾値があることが明らかにされました。
低閾値を持つ神経は、弱い触刺激に対して約100imp./sで最大応答し、その放電は不規則で、皮膚の圧迫に低頻度で応じる特徴があります。
一方、高閾値を持つ感覚神経は侵害刺激に応答します。
Davisらのサル有毛皮膚での実験では、侵害感覚神経に2種類あることが示されており、C線維の43%とAδ線維の57%は機械的刺激に応答せず、残りは応答します。
また、化学的刺激(bradykinin、histamine、serotonin、prostaglandin Eなどの皮内注射)には、ほとんどの神経線維が反応し、その後、機械的刺激にも敏感になることが観察されました。
さらに、熱刺激に対しては、機械的刺激に応じないC線維の約50%と、応じるC線維の92%、そしてAδ線維の38%が反応することが分かりました。
これらの発見は、皮膚感覚の複雑さを示しており、さまざまな種類の神経線維が絶えず働いて外部世界からの情報を収集し、私たちの脳に伝達しています。
この複雑なシステムの理解は、痛みの管理や治療、さらには感覚障害の理解に役立つ可能性があります。
皮膚感覚のこの多様性と複雑性は、私たちの生物学的な驚異を再認識させるものです。