TRPV1とTRPV2: 温度と痛みの知覚を司る受容体の謎
TRPV1受容体: 熱、カプサイシン、炎症のキープレイヤー
TRPV1受容体はもともと、トウガラシの主成分であるカプサイシンの受容体として発見されました。
しかし、その機能はこれにとどまりません。
43℃以上の熱や酸にも反応するカルシウム透過性チャネルとしての役割を持ち、私たちの熱感覚の基本を成しています。
さらに、この受容体はBK(ブラジキニン)やATPなどの他の化学物質の作用により、その閾値温度が30℃まで低下することが知られています。
これは、炎症が起こると、体温自体がTRPV1受容体を活性化させ、痛みを増強することを意味しています。
実際、炎症部位ではTRPV1受容体を発現するC繊維の数が増加し、痛みの感じ方が変化することが知られています。
TRPV2受容体: 痛み受容における未解明の役割
一方で、TRPV2受容体もカルシウム透過性チャネルですが、カプサイシンや酸には反応しません。
興味深いことに、TRPV2はインスリン様成長因子に反応し、痛み受容に直接関わっているかどうかはまだ明らかにされていません。
TRPV2受容体はAβ繊維にも発現しており、これは主に温度受容に関わらない繊維です。
これらの受容体の研究は、痛みのメカニズムを理解する上で重要な意味を持っています。
TRPV1受容体が炎症や熱による痛みの感知にどのように関与しているのか、また、TRPV2受容体が痛みの感知にどう影響しているのか、これらの疑問に答えることで、より効果的な痛み治療法の開発につながる可能性があります。