痛みの起源: 組織損傷時の生体反応と発痛物質の役割
日常生活における痛みの経験は避けられないものですが、痛みがどのように発生するのかについて詳しく知る人は少ないでしょう。
痛みは、組織が障害された際に起こる複雑な生体反応の結果です。
この記事では、細胞の損傷から痛みがどのように生じるのか、そしてそれに関わる内因性物質について解説します。
細胞の損傷と発痛物質
組織が障害されると、細胞質構成物質が放出され、侵害感覚器に作用して痛みを引き起こします。
主な内因性発痛物質には、乳酸、カリウムイオン(K+)、水素イオン(H+)、およびATPがあります。
- 乳酸: 嫌気性分解で生じる乳酸は、遊離神経終末に直接作用します。
- カリウムイオン(K+): 筋細胞や周辺の細胞膜が損傷されると、細胞内から流出し、神経終末を脱分極させて感覚信号を発射します。
- 水素イオン(H+): 過度の運動や脂肪の不完全燃焼により体液中に放出され、血小板や肥満細胞などに作用し、セロトニン(5-HT)やブラジキニン(BK)の放出を促します。
痛みの伝達
細胞膜の損傷により、アラキドン酸(AA)が生産され、リポオキシゲナーゼ(LG)によってロイコトリエン(LT)に変換されます。
また、シクロオキシゲナーゼ(CO)により、プロスタグランジンE2(PGE2)などの中間複合体を経て生産されます。
これらの物質は、大食細胞、好中球、T細胞、線維芽細胞などに作用します。
PGE2は侵害神経終末に作用し、サブスタンスP(SP)の放出を促進します。
これは血小板や肥満細胞からのセロトニンやブラジキニンの放出を促し、C線維神経終末を刺激し、痛みを引き起こします。
まとめ
痛みは、細胞の損傷とそれに伴う内因性発痛物質の放出によって引き起こされます。
これらの物質は侵害感覚神経終末に作用し、痛みの感覚を引き起こします。
この理解は、痛みの管理と治療において重要な意義を持ちます。
痛みのメカニズムを理解することで、より効果的な痛みの治療法が開発されることを期待しています。