多様な刺激を検出するVR1受容体: 温度、pH、脂質への反応性とその生理的意義
私たちの体は、環境からのさまざまな刺激に反応する能力を持っています。
この能力の背後にある重要な要素の一つが、VR1受容体です。
VR1は、温度、pH、さらには脂質など多様な刺激に反応する多モード検出器(polymodal detector)です。
この記事では、VR1受容体のこの驚くべき多様性と、それが私たちの体にどのように作用するのかを探ります。
VR1受容体は、特に43°Cを超える温度に反応することで知られています。
この高温にさらされると、チャネルが開き、特定の電流が流れます。
このプロセスは、capsazepineやruthenium redなどのVR1の拮抗剤で低減させることができます。
興味深いことに、この反応には細胞質内でのsecond messengerの活動は必要ありません。
VRL1、VR1とは異なり、capsaicinやH+に対しては鈍感ですが、50°C以上の高温に反応します。
これは、特定の中~太径の感覚ニューロンや、細径有髄(Aδ)侵害感覚器に影響を与えます。
このことから、VR1が43°C程度の温度に、VRL1が50°C以上の高温に反応すると結論づけられます。
また、VR1はpHの変化にも敏感です。
細胞外pHが7.6以下になると痛み反応が起こります。
熱による活性化電流は、外部のH+濃度によって促進されるため、pH6では22°Cでも反応し、チャネル開確率を高めます。
この反応性は、VR1の特定のglutamate残基に関連しています。
興味深いことに、VR1は脂質にも反応します。
ハエのTRPはアラキドン酸やリノレイン酸などの不飽和脂肪酸で活性化され、哺乳類のTRPCやTRPV(TRPの類型)はdiacylglycerolでも活性化されます。
capsaicinに化学構造上似ているanandamideはVR1を活性化する未確認lipidの一つです。
VR1受容体のこれらの特性は、我々の生理的反応において多様な役割を果たします。
温度感知、酸性環境への反応、さらには脂質による調節など、VR1受容体は私たちの環境適応能力に不可欠な要素です。
今後の研究で、VR1受容体のこれらの多様な機能についての理解が深まると、痛みの治療や炎症応答の管理など、新たな医療への応用が期待されます。
VR1受容体の複雑さと多機能性は、生命科学の分野における永遠の研究課題と言えるでしょう。