ASICチャネルの多様性:痛み感覚と神経応答の複雑な相互作用
ASICチャネルの多様性と痛みの感覚
私たちの身体には、痛みやその他の感覚を感知するための複雑なシステムが備わっています。
その中心にあるのが、酸に敏感なイオンチャネル(ASIC)です。
ASICは、その種類によって異なるpHで活性化され、さまざまな生理的反応を引き起こします。
例えば、ASIC1、ASIC2、ASIC3はそれぞれ、pH6.0、pH5.0以下、pH4.0で最大の半分まで活性化されるとされています。
ASIC1:侵害感覚との深い関連
特にASIC1は侵害感覚、つまり痛みの感覚と密接な関係があります。
このチャネルは、特殊な阻害剤であるPcTX1によって活動が遮断されることが知られています。
ASIC1b(またはASICpとも呼ばれる)は感覚ニューロンに限定して発現し、痛みの伝達に特化しています。
ASIC2とASIC3:脳と脊髄後根神経節での役割
ASIC2はヒトの脳からクローニングされたため、Brain Na channel(BNaC)とも呼ばれます。
一方、ASIC3は最初に脊髄後根神経節で発見され、dorsal root acid-sensing ion channel(DRASIC)と名付けられました。
これらのチャネルは、特に大型ニューロンに発現し、pH変化に応じて一過性の陽イオン流を引き起こします。
ASICの活性化と遮断
ASICチャネルは、外液のpHが7になると、一過性の水素で活性化されるナトリウム電流(H-activated Na current)を引き起こします。
pHが6以下になると、ナトリウムとカリウムの電流が定常的に流れます。
これらのチャネルは、高濃度のアミロライド(約100μM)で遮断されることも知られています。
痛みの感覚とASIC
炎症、感染、貧血などで起こる痛みはすべて持続的です。
例えば、腕を止血した状態で筋運動をすると、pHが7以下に下がり、痛みを感じることがあります。
しかし、心臓の貧血では強い痛みは感じるものの、pHには大きな変化は見られません。
ASICの新しい発見
最近クローニングされたASICAサブユニットは、下垂体に高レベルで発現していますが、それ自体は機能的なH-gated channel機能を持たないとされています。
さらに、ASIC1とASIC3は、FMRFアミドや関連アミドによってH-gated currentが高められることが示されています。
これらの放出因子関連ペプチドは、脊髄後根神経節ニューロンのH-gated currentの脱感受性を遅らせたり、電流のピーク振幅を高めたりすることがわかっています。
総括
ASICチャネルは、痛みの感覚や神経系の応答において重要な役割を果たしています。
これらのチャネルの多様性と複雑さは、神経系の研究においてまだ完全には理解されていない領域であり、今後の研究によって新たな治療法や疾患の理解が深まることが期待されます。
ASICチャネルの研究は、私たちの健康と病気の理解において非常に重要な役割を果たすことでしょう。