神経損傷と痛覚過敏: 電位依存性ナトリウムチャネルの長期変化の謎を解く
神経損傷後の痛覚過敏は、神経系の複雑な応答の一例です。
最近の研究により、侵害刺激が体性感覚系に持続的な過敏を引き起こし、これが記憶に似たメカニズムによるものであることが明らかになりました。
アメフラシの研究からの洞察
軟体動物アメフラシへの侵害刺激は、侵害感覚ニューロンに長期持続過剰興奮(LTH)を引き起こします。
これは、nitric-oxide (NO)-cyclicGMP-protein kinase G (PKG) 回路によって誘発されることがわかっています。
cGMPを注射するとLTHが起こり、その拮抗剤を与えるとLTHは消失します。
ラット三叉神経ニューロンの研究
Liuらのラット三叉神経ニューロンの研究では、細胞内のcGMP依存性経路の影響により、電位依存性TTX-R Naチャネルの活動が下がり、侵害感覚神経の興奮性が低下することが明らかになりました。
神経腫の形成と痛覚過敏
脊椎動物で神経を完全に切断すると神経腫が形成され、数週後には過剰痛覚興奮の発生が見られます。
機械的刺激に対する閾値の低下、後放電の持続、自発性放電などが起こります。
TTX-R と TTX-S Na チャネルの変化
痛覚過敏の期間には、TTX-R Naチャネルを符号化するmRNAの発現が低下し、TTX-S Naチャネルを符号化するmRNAの発現が増加します。
軸索切断後に見られる過剰興奮は、TTX-R Naから低閾値のTTX-S Na電流にシフトすることにより引き起こされます。
まとめ
このような研究結果は、神経損傷後の痛覚過敏に関する私たちの理解を深めています。
電位依存性ナトリウムチャネルの長期的な変化が痛覚過敏の背景にあることを示しており、これらの知見は将来的に痛みの治療法に新たな方向性を与えるかもしれません。