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メタボトロピックグルタミン酸受容体(mGluR)の役割と炎症性疼痛管理

メタボトロピックグルタミン酸受容体(mGluR)は、中枢および末梢神経系に広く分布しているGタンパク質共役受容体の一種である。
これらの受容体は、神経伝達物質の一つであるグルタミン酸によって活性化され、神経細胞の興奮性を調節する重要な役割を果たしている。
mGluRはその機能と位置に基づいて、大きく第I群、第II群、第III群の3つに分類される。
各群はさらに複数のサブユニット(mGluR1からmGluR8まで)に分けられ、それぞれが特有の発現パターンと機能を持つ。

第II群mGluRの特徴とその発現パターン

第II群に属するmGluR2とmGluR3は、無髄・有髄末梢神経の約30%に発現しており、神経細胞の興奮性を抑制することで、痛みの感覚やその他の神経系の機能に影響を及ぼしている。
これらの受容体は、痛みの伝達や炎症反応の抑制において重要な役割を果たすことが示唆されており、特に慢性痛や炎症性疼痛の管理において重要な標的となっている。

第I群と第III群mGluRの位置と機能

第I群(mGluR1と5)と第III群(mGluR4、6、7、8)の受容体は、第II群と同様に末梢神経系においても重要な役割を果たしている。
特に、mGluR7と8は細径感覚神経ニューロンに発現しており、痛みの感覚や認識に直接関与していることが知られている。
これらの受容体は、痛みのシグナル伝達の調節において特に重要であり、炎症や損傷によって引き起こされる疼痛の感覚を減少させる可能性がある。

 

炎症性疼痛のモデルとmGluR

炎症性疼痛の研究においては、Formalinテストが広く用いられている。
このモデルは、動物の足に少量のフォーマリンを注射することで局所的な炎症を引き起こし、その結果として生じる疼痛行動を観察することで、疼痛のメカニズムを解析する手法である。
Formalinテストにより、疼痛の二相性が明らかにされており、第一相(一次痛)はフォーマリン注射直後に見られる直接的な痛みの反応であり、第二相(二次痛)はそれに続く持続的な痛みの反応であるとされる。

第1群mGluR(特にmGluR1と5)の拮抗薬を使用することで、Formalinテストによって誘発される炎症性疼痛の第二相が著しく減少することが示されている。
これは、第1群mGluRが炎症後の持続的な痛みの感覚に関与していることを示唆しており、このグループの受容体を標的とすることで、炎症性疼痛の管理に新たな治療戦略を提供する可能性がある。

疼痛の二相性とmGluRの関与

疼痛の二相性は、痛みの処理と認識における複雑なメカニズムを反映している。
一次痛は、急性の、刺激に直接的に反応する痛みであり、主にAδ線維を介して伝達される。
一方、二次痛は、痛みの持続性や拡散性を特徴とし、C線維によって主に伝達される。
mGluRの拮抗薬は、特に二次痛に対して効果を示すことが多く、これはmGluRが痛みの持続性や慢性化に関与する神経回路の調節に重要な役割を果たしていることを示している。

結論

メタボトロピックグルタミン酸受容体は、疼痛の認識と処理において重要な役割を果たしている。
特に、第II群と第III群の受容体は、痛みの伝達において中心的な役割を担っており、これらの受容体を標的とした治療が、炎症性疼痛管理において有効である可能性が示されている。
今後、これらの受容体に対するより詳細な研究が進むことで、疼痛管理における新たな治療戦略の開発につながることが期待される。

2024年03月04日 20:03

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