ブラジキニンによる炎症と痛覚過敏のメカニズム
痛みは、私たちの身体が受けたダメージに対する自然な反応ですが、その背後には複雑な生化学的プロセスがあります。
特に、ブラジキニン(Bradykinin、Bk)というペプチドが炎症と痛覚過敏にどのように関与しているかを解説します。
このペプチドは、体がストレスや物理的損傷を受けた際にkallikrein-kinin系から放出され、痛みを引き起こす重要な因子となっています。
ブラジキニンとは?
ブラジキニンは、プロテアーゼであるカリクレインによって前駆体から生成されるペプチドで、主に炎症反応を誘発する役割を持っています。
この化学物質は、B1受容体を含む侵害感覚ニューロン上の特定の受容体を活性化することで、痛みの信号を直接引き起こします。
痛みの生理学的プロセス
ブラジキニンが結合するB1受容体は、細胞内のシグナル伝達経路を介して痛みを引き起こすことが知られています。
具体的には、phosphoinositidase Cと結合し、さらにPKC-2を活性化して細胞膜のイオンチャネルをリン酸化します。
このリン酸化プロセスが、痛覚過敏を引き起こす根本的なメカニズムとされています。
ブラジキニンの影響を受ける細胞
B1受容体は、ニューロンだけでなく、神経膠細胞や線維芽細胞など広範囲の細胞に存在しています。
例えば、DRG(背根神経節)のSchwann細胞はブラジキニンに反応してグルタミン酸を放出し、線維芽細胞はプロスタグランジンE2を放出します。
これらの化学物質は、炎症と痛みをさらに促進する役割を担っています。
非ニューロン細胞におけるブラジキニンの作用
非ニューロン細胞である衛星細胞も、ブラジキニンの影響を受けます。
ブラジキニンはこれらの細胞にあるB1受容体を活性化し、細胞内のカルシウム濃度を高め、Ca活性化Cl導電性を活性化します。
これにより、炎症と痛覚過敏の促進が見られます。
このように、ブラジキニンは体内の様々な細胞に影響を及ぼし、痛みと炎症の複雑なネットワークを形成しています。
これらの知識は、痛みの治療や管理において新たなアプローチを提供する可能性を秘めています。