痛みの神経科学:痛感覚ニューロンの役割とその特性
痛感覚と特異的ニューロンの役割
痛みは人体において重要な警告システムであり、複雑な神経ネットワークを通じて伝達されます。
その中でも、特に重要な役割を果たすのが侵害特殊ニューロン(nociceptive specific neuron: NSN)です。
これらのニューロンはAδ第一次感覚神経と単シナプス性に接続しており、ピクッとする一次痛(sharp pain)に関与しています。
NSNの多くは長い軸索を持ち、脊髄の反対側の腹外側を通って視床にまで達する脊髄視床路(spino-thalamic tract: STT)を形成しています。
焼痛感覚と体性感覚地図
NSNは体性感覚地図(somatotopic organization)を構成しており、特に焼痛(burning pain)感覚を表現する放電パターンで特徴づけられます。
Craigの研究によれば、これらのニューロンは焼痛感覚を示す独自の放電パターンを持ち、脳の異なる領域に痛みの情報を伝えます。
このメカニズムは、痛みが身体のどの部分から来ているかを脳が認識するために重要です。
運動中の痛感覚信号の抑制
意欲的な運動中に痛感覚信号の伝達が抑えられることが観察されています。
RoseらとSekiらの研究によれば、第一次皮膚感覚神経の中枢端はGABA放出介在ニューロン(GABAergic interneuron)によってシナプス前抑制を受けています。
運動命令の下行性信号は運動ニューロンを活動させると同時に、この介在ニューロンを興奮させ、痛感覚神経中枢端をシナプス前抑制します。
これにより、運動中の痛みが軽減されるのです。
痛感覚ニューロンの分類と機能
Prescottらの研究では、痛感覚ニューロンはその膜特性に基づいて4つのタイプに分類されています:
- 緊張型(tonic type):比較的ゆっくりと発火し、刺激中に放電し続ける。
- 相動型(phasic type):持続的に高頻度で群化放電(burst discharge)する。
- 遅延開始型(delayd onset type):侵害刺激後に遅れて不規則な放電を行う。
- 単一スパイク型(single spike type):強く脱分極されたときでさえ、単一発火する。
これらのタイプは、それぞれ異なる機能を持ち、痛感覚の検出と伝達において重要な役割を果たしています。
緊張型と遅延開始型は積分器として働き、相動型と単一スパイク型は検出器として働いています。