ラットの脊髄で起こる神経の変化
神経の種類と信号の伝わり方
脊髄にはAβ線維とAδ線維という神経があります。
Aβ線維は触ったり軽く押したりする感覚を伝え、Aδ線維は少し痛いと感じるような刺激を伝えます。
この研究では、ラットの脊髄でこれらの神経がどのように信号を伝えるかを調べました。
普通のラットの脊髄の反応
研究では、Aβ線維が刺激されると、第II層ニューロンという神経細胞の24%が興奮することがわかりました。
また、Aδ線維が刺激されると、34%のニューロンが単シナプス性(1つの神経から直接伝わる)で興奮し、7%が多シナプス性(複数の神経を介して伝わる)で興奮します。
神経を傷つけた場合の変化
坐骨神経を切断したり、糸で締めて傷つけると、Aβ線維の信号を多シナプス性で伝えるニューロンが65%以上に増えました。
一方で、単シナプス性で伝えるニューロンは10%以下に減りました。
これは、神経が傷つくと信号の伝わり方が大きく変わることを示しています。
その他の発見
さらに、軽い神経障害後にはAβ線維の信号を伝えるニューロンが減り、多シナプス性Aδ線維のニューロンは44%まで増えました。
しかし、単シナプス性Aδ線維のニューロンは減る傾向にありました。
このように、脊髄の神経細胞は、神経が傷つくと様々な変化を起こします。
特に、どの神経がどのように信号を伝えるかが大きく変わることがわかりました。
脊髄の外側と内側の違い
脊髄の第II層ニューロンは、外側と内側で異なる感覚信号を受け取っています。
後根の電気刺激では、外側のニューロンは内側よりも大きな興奮性シナプス後電流(EPSC)を示しますが、抑制性シナプス後電流(IPSC)は小さいです。
その他の重要な神経物質
研究では、neuropeptide Y (NPY)という物質がシナプス前受容体を介してEPSCを低下させることがわかりました。
また、GABAという神経物質の受容体を遮断すると、触っただけで痛みを感じる異痛(allodynia)が起こることがわかりました。
このように、脊髄の神経細胞やその周りの物質がどのように働くかを知ることで、痛みや感覚の仕組みを理解する手がかりになります。
まとめ
ラットの脊髄では、神経が傷つくと信号の伝わり方が大きく変わります。
Aβ線維やAδ線維の役割、脊髄の外側と内側の違い、そして重要な神経物質の働きなど、神経の仕組みを知ることで、痛みの治療や感覚の研究に役立つことがわかりました。