足底腱膜は踵骨結節付着部から中足骨の頭部まで存在する腱組織である。
足底腱膜は足部付近では垂直方向の繊維で、遠位では水平方向の繊維組織で皮膚と繋がっている。
足底腱膜は中央・外側・内側から構成される。
中央構成
足底腱膜の中央構成は踵の結節から前足部にかけて最も大きく、強い組織である。
これは、アキレス腱や足底筋腱に影響を受けていることが知られている。
足底腱膜の中央の構成の幅は1.5~2cmで長軸方向に走行し厚く、光沢がある。
少しねじれを伴い少しずつ遠位にいつにつれて幅が広がる。
中足骨レベルにおいて、足底腱膜は徐々に5つに分かれ、中足骨近位部に付着する。
またその5つに分岐した成分は、表層成分と深層成分に分かれる。
中央に構成する3つは足趾に向かう。
3つのうちの1つは母趾と2趾の間に向かい、次の構成成分は3趾もしくは3趾と4趾の間に向かう。
最後の構成成分は5趾もしくは4趾と5趾の間に向かう。
中足骨頭の前方において、3つの表層を構成している成分は皮膚とつながり、深層部は靭帯成分とつながる。
残りの2つは、足部の内外側縁に向かい、内側は母趾に、外側は5趾に向かう。
中足骨頭部近位で、足底腱膜は脂肪組織で仕切られた横方向に走行する靭帯と交差し、腱鞘を構成する。
この成分は、母趾のレベルにおいて内側の長軸方向のバンドと結合する。
皮下の横方向に構成体は皮膚とつながり、斜めの構成体は深層に位置し、足底腱膜の長軸方向の成分や中足趾節複合体とつながる。
足底腱膜の深層成分は5つに分岐したのちさらに対となるため10の中隔に分かれる。
浅層成分は屈筋腱の腱鞘を構成する一部となり、周囲靭帯と結合する。
外側の構成
外側の構成にはバリエーションが存在することが知られている。
足底腱膜の外側の構成の幅は1~1.5cmであり、踵から第5中足骨基部に付着する。
内側の構成
内側の構成には、母趾外転筋の筋膜として構成され近位側は薄く、遠位側で厚い構造をしている。
オーバーユースによるスポーツ障害であり、陸上競技選手やランニング愛好家に発生することが多いが、バスケットボールなど急激なストップが多い競技にも発生がみられる。
足関節背屈可動域の低下により、踵骨の底屈(相対的な足部の背屈)が生じる事で足底腱膜に負荷が加わりやすい。
足関節背屈可動域の低下による足底腱膜炎のリスクについての論文はこちらで紹介しています。
機能
足底腱膜は足が体重を支えてるときに張力を受ける組織として機能することによって、足のアーチの支持に寄与する。
1つの生体力学的モデルは、それが足の総負荷の14%を占めると推定した。
足底腱膜の断裂は、踵骨近位の付着で最も頻繁に起こり、足底腱膜炎の症状の通常の位置と一致する。
足底腱膜はウインドラス機構はMTP関節が背屈することにより、足底腱膜が緊張して、足のアーチが上昇する現象である。
ウインドラス機構は歩行時の動的機能にも重要な役割を担っている。
歩行の接触段階の間に足底腱膜が連続的に伸長することが見いだされる。
中立姿勢の前と直後の急速な伸長を経て、中間姿勢とつま先の間で最大9〜12%の伸びに達する。
病態
骨棘の生成に関連して、伸長と圧迫の異なる負荷が原因として考えられている。
伸長負荷:足部アーチを支持する足底腱膜が荷重運動により伸長を繰り返すことで組織変性を主とする慢性病変が生じる。
足底腱膜炎は組織変性であって炎症は起きていないのでは?という論文はこちらで紹介しています。
圧迫負荷:接地時に踵の圧迫を繰り返すことで、踵骨の腱膜付着部の組織編成や骨棘を生じる。
症状
・踵内側の痛みが中心、足底腱膜に沿った痛みを訴える。
・起床直後の足の接地による痛みが特徴。軽度の場合は運動開始直後に出現するが継続することで消失する。
・症状が悪化すると運動後も痛みを訴え、重度になると運動中にも痛みが悪化する。
診断
足底腱膜炎の慢性例では長時間の歩行で疼痛が増強する。
足底腱膜炎の発症には、凹足・扁平足・高度肥満・下腿三頭筋筋緊張などのリスク因子が影響している事が知られている。
仕事・スポーツを含めた日常生活の中で足がどのような環境に置かれているのかを確認すべきである。
仕事ではデスクワーク・立ち仕事・運搬などの仕事内容に加えて、経験年数も聴取する。
スポーツでは、種目・経験年数・頻度を聴取する。
仕事およびスポーツで使用している靴の種類もチェックする。
凹足・扁平足の患者は本人の足より大きいサイズの靴を履いていることが多く、それが原因で足底腱膜炎を発症していることも少なくない。
身長体重だけでなく、発症前後の体重増加の有無も聴取する必要がある。
発症前には夜間にこむら返りが起きていることもある。
視診
足底腱膜炎では腫脹・発赤・熱感などの炎症所見をごく軽度認める事はあっても、著名な異常を認めることは少ない。
著名な異常所見を認める場合は踵骨骨折・ガングリオン・骨腫瘍・化膿性骨髄炎・蜂窩織炎などとの鑑別が必要である。
立位での足を観察して、扁平足・凹足の有無を確認する。
触診
圧痛は重要な診断材料であり、圧痛部位で概ね他の疾患との鑑別が可能である。
足底腱膜炎では踵部の内底側に圧痛点がある。
母趾MTP関節を他動背屈することで足底腱膜が伸長されて踵痛が誘発されるのも特徴的所見である。
画像診断
単純X線像
非荷重足部正面像・斜位像と立位足部正面像・側面像および立位足関節正面像を撮影する。
非荷重足部像では骨萎縮・骨透亮像などの異常や骨の形態異常の有無をチェックする必要がある。
立位足部・足関節像では扁平足、凹足の有無、踵骨棘の有無をチェックする。
踵骨棘と足底腱膜炎との関連については多くの報告がある。
超音波画像
正常な足底腱膜は膠原線維が長軸方向に規則的に配列しているため、長軸像では線状の高エコー像が層状に観察できる。
短軸像では点状の高エコー像が群生しているのが確認できる。
ほとんどの足底腱膜炎症例では踵骨内側結節の足底腱膜付着部に異常を認め、足底腱膜の肥厚に伴うfibrillar pattern の開大もしくは足底腱膜内の低エコー像が特徴的所見である。
足底腱膜の肥大に明確な基準はなく、海外の文献では4mm以上を足底腱膜の肥厚と診断することが多い。
MRI画像
MRI画像における足底腱膜炎の特徴的所見はT1強調像での足底腱膜の肥厚であり、脂肪抑制T2強調像での足底腱膜周囲の浮腫、足底腱膜内高信号領域、踵骨骨髄浮腫である。
2.8mm以上の足底腱膜は肥厚していると考えて良い。
・足底腱膜の付着部である踵骨隆起の内側に圧痛を認める。
・足底腱膜には腫脹・発赤・熱感などの炎症症状が起きないことが多い。
・X線では骨棘を認めることもあるが、痛みを訴えないこともあり、症状とは必ずしも一致しない。
整形外科的テストにはウインドラステストが使われることが多い。
特異度が100%なので陽性の場合足底筋膜炎を有する可能性がかなり高いが、感度が低い(非荷重位13.6%、荷重位31.8%)なので陰性であっても足底筋膜炎の可能性は除外できない。
ウィンドラス検査についての詳細が書かれた論文はこちらで紹介しています。
治療
・保存療法による治療を行い、症状が重度で運動中の疼痛により競技に支障が出る場合は荷重運動を休止する。
・症状が軽度で競技自体に支障がない場合には、トレーニング内容の選択や負荷量の調節によりスポーツ運動を継続することもある。
・薬物療法としてはステロイド注入が一時的な疼痛の減弱には有効とされ、長期に渡り慢性化した場合や疼痛が著しい場合の選択肢となる。
慢性足底腱膜炎に対するマッサージの有用性について書かれた論文をこちらで紹介しています。
問診
・疼痛の出現場所や程度、回復までの期間などを把握する。
疼痛
負荷や条件を変えて症状を評価し、痛みの程度や可能な運動を把握し、リハビリテーション実施の参考とする。
・圧痛:踵骨隆起内側や足底筋膜実質を触知し、どの部位に痛みが生じるか確認する。
・荷重時痛:前方への踏み込み動作で離地と着地のどちらで疼痛が強いか確認する。
ウインドラス機構
足関節中間位で足趾を背屈した状態で足底腱膜の内側と外側を触知し、緊張や弛緩の程度を確認する。
・足底腱膜の圧迫による足趾の他動背屈に対する抵抗感の変化を評価する。
・外側縦アーチの降下による第4・5趾のリスフラン関節の背屈制限は、足底腱膜外側部のウィンドラス機構の機能を低下させ、内側部分に偏った負担を生じる。
関節可動域
足底腱膜に伸長ストレスを生じる足関節、足趾の背屈制限、足底腱膜に偏ったストレスを生じる関節運動(足関節底屈、距骨下関節回内、ショパール関節回内や内外転、足趾底屈)の制限について評価する。
筋力
足部アーチの支持に貢献する足関節、足部の筋力を中心に、ランニング動作の姿勢の安定に関与する膝関節、股関節、体幹の筋力に至るまで、全身的な評価を行う。
動作分析
疾患の発生メカニズムを推察するために、動作分析により動作部の患部への負荷を推定する。
メディカルリハビリテーション
関節可動域の改善
患部に直接張力を増す筋腱の緊張緩和や、アーチ構造を正常化するための可動性を回復するためのストレッチングを選択する。
・足関節・足趾背屈制限:距骨のすべり運動を誘導しながら、足関節やMP関節をストレッチする。
・足関節・足趾底屈制限:伸筋腱が通る足関節前内側を意識したストレッチングを行う。
・ショパール関節外転制限:舟状骨や楔状骨の下にゴムボールなどをあてて、マッサージにより周囲筋(長腓骨筋腱、短母指屈筋、母指外転筋)の緊張を緩和する。
筋機能の向上
アーチを支持するための筋力やランニング時の立脚期に動作を安定させる目的で股関節筋力を中心にトレーニングを行う
・足関節・足部:足底腱膜全体の緊張を得るために足趾の背屈や足部の回内の筋力強化に務める
・ランニングの接地時の安定性に関与する筋機能の向上を図る。
インソールやヒールパッド
・日常生活で痛みがある場合は、早期に製作することで疼痛改善に短期的な効果がある。
・内側縦アーチ、外側縦アーチの両方を形成できるインソールを選び、足部のアライメントと内外側の荷重バランスを保つように配慮する。
アスレチックリハビリテーション
動作分析
実際の歩行やランニング、ステップなどの移動動作において、足底部へのストレスを生じやすい姿勢や動作の特徴を捉える。
・下腿前傾の減少:早期の離踵による足底腱膜への伸長ストレス、前方への重心移動が起こりづらい事による踵への圧迫ストレスの原因となりうる。
・接地時の底屈位接地、離地時の過度の底屈:下腿前傾の減少や下腿筋の疲労とタイトネスを招く。
・足部外転位での蹴り出し:足底腱膜の内側に伸長ストレスがかかる。
・扁平足でショパール外転を伴う場合は、内側縦アーチの低下により足底腱膜内側が伸長される。
・ハイアーチで拇指球荷重の代償動作である場合は、外側縦アーチの低下により、足底腱膜の外側がウィンドラス機構として機能せず、足底腱膜内側に負荷が集中する。
・腰椎前湾の減少・胸椎後弯の増大:前方への重心移動の妨げとなる。
・骨盤前傾、股関節屈曲・内旋に伴う自然な母趾球荷重が妨げられ、足部外転位での蹴り出しの問題につながる。
・後方重心により、ストップや方向転換の接地で圧迫ストレスが踵に加わりやすい。
荷重トレーニング
前方への重心移動に伴い、自然に母趾球側に荷重が移るようにトレーニングを行う。
・タオル踏みスクワット:外側縦アーチを挙上することで、ハイアーチでは足部回内運動の改善、扁平足では横アーチの形成を図る。
・前後開脚スクワット:重心の前方移動を行いながらスクワットを行い、足関節・足部の外返し、足趾背屈の方向に力を入れることを意識する。
競技への復帰段階
運動を休止した場合は、スポーツの基本動作や競技動作を徐々に開始して復帰を目指す。
・歩行や前方への踏み込み動作が痛みなく可能になった時点で、ジョギング開始。
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2019年12月19日 22:04